LA SIESTE

2017年5月17日水曜日

七草公園のこと。


以前、
クリソコラという天然石にまつわる話を
「怪談」話として書きためているものの中で書いたのですが、
…それは、こんな内容です。

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昔、私は学生時代の先輩からクリソコラをもらったことがあります。

その頃、私はたくさんのストレスを抱えて東京で働いており、
一番ひどいときには、道をまっすぐ歩くのもつらいほど
神経具合を悪くしていたので、先輩が
気持ちを落ち着かせ、リラックスする効果があるというこの石を、
首から下げる布製の袋と一緒に私にくれたのです。

先輩はパワーストーンにくわしく、
たしか、水晶に浄化作用があるということも
この先輩から聞いたと記憶しています。

クリソコラは、青と緑の中間のような色をした石で、
いかにもヒーリング効果がありそうな
綺麗な海の水のような色をしていました。

それからずっと時がたって、
その石があることもすっかり忘れた頃のことです。
もらってからしばらくの間は、
石を首から下げて持ち歩いたりしていたのですが、
いつのまにか体調も良くなったので、
持ち歩くこともなくなり、
長い間部屋のどこかにしまっていたのです。
それが、ある日、
ふと見つかって、
そういえば、こういう石があったっけ、と思って
袋から出して見ると、
あんなに綺麗な青緑をしていた石に、
大きな黒い斑点のようなものができていました。

持ち主に何かあった時、
パワーストーンが身代りになって
ぱっくり半分に割れるという話も聞いたことがあったので、
これは持主の悪いエネルギーを石が吸ってくれたにちがいない
と思いました。

近いうち、感謝をこめて
石を埋めに行こうと思っています。

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……という話があったのですが、
今日は感謝をこめて、そのクリソコラを
自然の川へと返してきました^^。

今日は久しぶりに晴れたので散歩日和だったこともあり、
いつも散歩する方とは反対方向に
河原を下ってみることにしました。

一番気に入った場所を見つけて、
二センチもない小さな石を川の真ん中に放り込むと、
なんともいえないすがすがしい気持ちになりました。
今まで守ってくれてありがとう、と心の中でお礼を言いました。

昨日までは雨が降っていたのですが、
今日は打って変って本当に天気がよく、
一面茂ったクローバーには、瑞々しい水滴がたくさんついていました。
朝から太陽が照って青空が広がる陽気なのに
冷たくてすがすがしい風が吹いていました。

ふと、前方を見ると、
見慣れない橋が掛っていました。
そういえば、いつも散歩する上りとは反対方向に進んできていたので、
いつもとは違う橋が目の前にあるわけです。

その橋を渡ったらどこに行くんだろうかな、と思い、
私は、さっそく河原から上がって
橋を渡って歩いて進んでいくことにしました。
天気が良い日に、知らない場所を冒険するのは
なんと楽しいことでしょう。

さて、橋を渡って、ぐんぐん進んでいくと、
白い壁や、緑の壁の家、
海のような綺麗なブルーの壁の家があり、
公園があり、そこから歩くと、またさらに大きな公園があります。
どれもこれも知らない景色で、
ひとつひとつ眺めながら歩くのは、新鮮でした。

橋のところまででも歩くのは
結構な距離なのですが、
そこからさらに結構な距離を歩いたので、
あそこの角まで歩いたら、そろそろ戻ろうかなと思うのですが、
角を曲がるとまた、初めて見る新鮮な景色が広がるので、
疲れも忘れて自然に先に進んでしまうのでした。

さて…、
そうやってしばらく散策をしたあと、
そろそろ戻ろうかな、と思って、
私は来た道と同じ道を引き返して歩きはじめました。

先ほど通った時に見かけた大きな公園を、また通りかかったとき、
少し休もうかな、と思って、
誰もいない公園のベンチに腰掛けました。
若い緑のクローバーが、地面いっぱいに茂っていて、
水滴をつけています。

ベンチの周りは木で囲まれていて、
なんとも居心地のよい朝の陽気に包まれていました。
葉の色と形が銀杏に似ていたので、
私は「銀杏かな。」と思ったですが、
木を見上げてよくよく葉を観察すると、
葉の形はイチョウ型ではなく、丸くて、
イチョウのうす黄緑ではなく新緑の黄緑色のようでした。

木に名札がついていないかと、
私は公園の木々を見回してみたのですが、
名札がついている木は見当たりません。
「なんの種類の木だろうかな…。」と思いながら
ぼんやりしていたのですが、
その時、少し、不思議なことに気がつきました。

正面に生えている木の中の、一本の木だけが、
半分だけ枯れ枝で、あとの半分に新緑が茂っているのです。

まるで定規でシュッと線を引いたように、
左半分は葉が一枚もなくて、
右半分だけが、青々とした緑の葉をつけているのです。
同じ種類の周りの木はすべて青々としているのに、
その一本の木だけが、そうなっているのですから。

影となる建物もなく、
上から日がさんさんと照る中で立っている一本の木が、
左半分はむき出しの枝で、右半分だけ新緑が茂っているわけだから
それはとても不思議な光景でした。

公園と、その木の前の道路をはさんで、
私がベンチに座って眺めている正面は、アパートが並んで建っていました。
道路に面して、茶色いドアが四つ並んでおり、
二階の部分も、やはり同じ茶色いドアが四つ並んでおり、
その二階に続く階段が、二個、取り付けられていました。
そして二階部分の中央に「コーポI」と書かれていました。
それとまったく同じ建物が左隣にもうひとつあって、
そっちの方には「メゾンI」と書かれていました。
全く同じ建物なのになぜ、「コーポ」と「メゾン」なのか
変だと思ったのですが、それがまた
その場の光景をいっそう不思議にしてしていました。

道路の真ん中には、
オレンジ色のバスケットボールがひとつ落ちていました。
その「コーポ」か「メゾン」かに住む子供が
前の日にその道路で遊んだのでしょうか。
それもまた、その光景を非日常的に見せているものの
ひとつのような気がしました。

早朝のせいか、
道路も、家も、人の気配がなく、静まり返っています。

私はその不思議な木の近くに行って
よく見て確かめたいと思ったのですが、
立ち上がろうとして体を動かしたその時、
なんのことない、目の前にある電灯のかげに
一本の木の幹が隠れていただけだった…、ということに
気がつきました。

そう、それはただ
一本の新緑が芽吹く前の枯れ木と、一本の新緑が茂る木が
並んで生えていただけのことだったのです。
その一本の幹が、たまたま電灯で隠れていたので
そんな奇妙な光景に見えていたのです。

なんだ…そうだったのか…!と思ったのですが、
この不思議な光景に出会えたのは、さまざまな偶然からで、
もし、また別の日に、同じ道を通って散歩に行っても
まったく同じ光景に出会えることは二度とないでしょう。

そう思うと、やっぱり今日は
不思議な光景に出会ったのだなと思えます。


帰り際に見ると、
その公園には「七草公園」という名前がついていました。

















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